最近、スマートフォンで楽しめる「ショートドラマ(ショードラ)」が若者の間で急速に人気を集めています。動画共有アプリ「TikTok」に次々と投稿される短編ドラマは、娯楽としてだけでなくビジネス面でも注目されています。このトレンドにはいくつかの背景があります。

ショードラの魅力とは?

ショートドラマは、通常1分30秒から2分程度の短い映像作品で、特にスマホの縦画面で見ることを想定しています。音楽に合わせて踊ったり歌ったりする従来の短い動画とは異なり、物語性が強く、視聴者の心を掴む魅力があります。

特徴 詳細
長さ 1分30秒~2分
視覚 スマホの縦画面での視聴を想定
ジャンル ドラマ、コメディ、ミステリーなど多様
主要プラットフォーム TikTok、YouTube、Instagramなど

需要の高まり

コロナ禍を経て、日本でもSNSの利用が爆発的に増加し、その中でショードラの需要も急激に高まりました。特に、「Z世代」と呼ばれる1990年代半ばから2010年頃に生まれた若者を作り手に持つこの新しい映像コンテンツは、身近でリアルな話題が多く、共感を呼ぶ作品が多いのが特徴です。

「GOKKO」の革新

日本におけるショートドラマの先駆者的存在が「GOKKO」です。この会社は、コロナ禍で舞台の出演機会が減少した俳優たちが中心となって2021年に設立されたクリエイターグループ「ごっこ倶楽部」が母体です。彼らは、ショードラの流行が必ず日本にも訪れるだろうと考え、ビジネス化に成功しました。

彼らが制作した作品は2023年6月時点で約1200本に達し、累計再生回数は40億回を超えています。この数字には、多くの人々がショードラに興味を持っていることを示しています。

コスト効率とスピード

ショードラの制作は、テレビドラマや映画に比べて予算がはるかに少なく、撮影に関わるスタッフは約10人ほどです。作品1本の企画から配信までの期間はわずか2、3か月と短く、同時に複数の作品を手がけることも可能です。この「低コストかつスピーディー」な制作方法が、多くの新作を生み出す要因となっています。

ショードラ制作風景

限られた時間での魅せ方

ショードラは、冒頭の2〜5秒を特に重視します。視聴者がスキップしてしまわないよう、登場人物の感情をオーバーに表現し、瞬時に場面を切り替える工夫が施されています。「GOKKOが作れば100万回再生は取れる」と自信満々に語る田中聡社長は、ショードラのポテンシャルに強い確信を持っています。

視聴者の動向

近年の調査結果によれば、若者のテレビ離れが進んでおり、ショードラがその隙間を埋める形で台頭しています。若者たちは、長時間のドラマや映画よりも、短い時間で楽しめるコンテンツを求めているのです。

年度 国内市場規模(ドル) 予測成長率
2023年 約2000万
2024年 約1億3000万 約550%の成長
2029年 約566億 10倍以上の成長を見込む

ブランドの活用とビジネスの変化

国内企業も、このショードラ人気に目を向けています。食品メーカー「フジッコ」は、自社の昆布製品を使ったレシピを紹介するショードラを制作し、TikTokなどで公開しました。このような試みは、若者に直接アプローチする新しい広告手法とされています。

担当者は「広告感が少なく、サッと見られることで若者にも興味を持ってもらえる」と語り、テレビCMとは異なる高い効果を実感しています。制作・放送にかかる費用が従来の数億円から数百万円程度に抑えられ、コスト効率が格段に向上しています。

ショードラアワードの設立

2023年4月には、優れたショードラを表彰する「ショードラアワード」が開催されました。コンサルタント会社社長の長田俊哉氏が主導し、ショードラを通じて無名の才能を発掘することを目指しています。「手軽に参入しやすいショードラを通じて、若い作り手たちと映像メディアをつなぎたい」と述べています。

未来を見据えて

若者の間で広がるショートドラマの人気は、単なる流行に留まらないと考えられています。日本のエンターテインメント業界全体がこの新しい潮流に適応し、新たな作品が生まれることを期待しています。ショードラは、今後も若者の心を掴み続け、進化を遂げることでしょう。

ショードラアワード受賞式

ショードラは、若者にとっての新しい表現の場であり、エンターテインメントの未来を担う力を秘めているといえます。今後の成長に注目です。