近年、SNSアカウントの売買がインターネット上で広がりを見せている。利用規約に明確に禁止されている行為にもかかわらず、フォロワーが多いアカウントが高値で取引される事例が急増しており、特に人気のあるプラットフォームにおいてはその傾向が顕著だ。専門家は、こうした動きが「収益化のチャンス」と捉えられていることが原因と分析しており、今後のトラブルの可能性についても警告している。
SNSアカウントの高額売買
大阪市に住むコンサルタント業を営む男性は、2022年にInstagramのアカウントを300万円で売却した。このアカウントは、韓国旅行をテーマにしたもので、フォロワー数は最大17万人に達している。この男性は、韓国語教室を宣伝し、リンクを通じて報酬を受け取っていたが、外注費用の増加を受けてアカウント売却に踏み切った。「フォロワーを育てたアカウントを売るのは財テクの一つだ」と彼は語る。
このような事例は珍しくなく、現在では売買を仲介するサイトが多数存在し、そこでは「安定黒字」「月収益50万〜90万円以上」という触れ込みでアカウントが販売されている。以下の表は、ある仲介サイトにおける一部アカウントの詳細を示したものである。
アカウント名 | プラットフォーム | フォロワー数 | 売却価格 |
---|---|---|---|
韓国旅行ガイド | 170,000 | 300万円 | |
美容アカウント | TikTok | 100,000 | 250万円 |
健康食品レビュー | 80,000 | 150万円 |
規約の厳しさと無視される現実
SNS運営各社は、利用規約で無許可のアカウント売買を禁止している。例えば、Instagramを運営するメタ社は、「第三者への無断譲渡は有償・無償を問わず禁止」と明言している。それにもかかわらず、実際には数多くのアカウントが売りに出され、価格も数万円から数百万円と多岐にわたる。これには、仲介サイトや構築されたコミュニティが影響していると考えられている。
トラブルの増加と専門家の警告
国民生活センターによると、SNSを利用した個人取引でのトラブル相談件数は、2023年度に約79,000件に達し、2019年度の約3倍に増加している。この増加は、アカウントが売買された後に削除されるケースや、契約違反による高額な違約金が生じていることに起因している。ネット問題の専門家である福井健策弁護士は、「アカウント売買は多くのケースで利用規約に違反し、その結果としてさまざまなリスクが生じる可能性がある」と指摘している。
アカウント売買のリスク:犯罪利用の可能性
アカウントを無断で売買した場合、運営会社による制限や停止などの措置が行われる可能性がある。さらに、売買後にアカウントが閉鎖され、そこから代金を巡るトラブルが生じる危険性も否定できない。こうした背景には、身分を隠して詐欺行為を働く輩も増えているとの意見もあり、SNS上での悪質な行為には注意が必要だ。
終わらない売買の風潮
アカウントを売買する行為が横行する背景は、急速なSNSの発展とともに、収益化のための新たな手段として位置付けられていることにある。しかし、このような行為が続く限り、規約違反を助長するだけでなく、利用者同士のトラブルも増え続けるだろう。SNSの運営側は、アカウント売買を防ぐための対策を強化する必要があると考えられる。
一方で、アカウントの売買に関する情報は、生成AIなどの最新技術を用いて魅力的に売り出されることもある。例えば、AIを用いたコンテンツ作成によって、フォロワーの獲得が容易になるとの触れ込みが、売り手をますます増やしているという。
まとめ
SNSアカウントの無断売買は、規約に反する行為でありながら、今もなお増加し続けている。高額な売り上げとともに、トラブルのリスクも高まっており、利用者の冷静な判断が求められている。運営会社の効果的な対策とともに、ユーザー自身も慎重に行動することが必要なのだ。