近年、半導体業界の巨人インテルは、かつての栄光を失い、厳しい状況に直面しています。特に、パット・ゲルシンガーCEOの肝煎り事業であるファウンドリー事業の進展が、同社の成長を阻んでいるとの指摘が多く、これが「独り負け」と呼ばれる状況を引き起こしています。インテルの時価総額は、AMDの約半分にまで減少し、業績も赤字転落を余儀なくされています。
インテルの現況と業績
2024年の上半期、インテルは売上高255億ドルを計上しましたが、営業利益は30億ドルの赤字という厳しい結果でした。この赤字は、1990年以来で最低の水準を記録した昨年から続いており、インテルの先行きには不安が広がっています。
以下は、インテルの最近の業績の詳細を示す表です。
年度 | 売上高 (億ドル) | 前年比増減率 | 営業利益 (億ドル) | 利益率 (%) |
---|---|---|---|---|
2023年上半期 | 246 | 2.4% | -20 | -8.1 |
2024年上半期 | 255 | 3.6% | -30 | -11.8 |
株価と時価総額の変遷
インテルの時価総額は970億ドル(約13.8兆円)と、前年同期に比べて半減していました。対照的に、競合であるAMDの時価総額は2500億ドル超まで増加しており、AI半導体市場の波に乗っています。この顕著な差は、インテルの「独り負け」を如実に表しているのです。
ファウンドリー事業の影響
インテルが設立したファウンドリー事業は、元々のビジネスモデルから逸脱し、過去の立派な業績を食い潰す大きな要因になっています。2024年上半期のファウンドリー事業の売上高は僅か87億ドル、そのうち外部顧客への売上高はたったの1億ドルという現実に、インテルの事業戦略の矛盾が浮き彫りになっています。
ファウンドリーの分社化
2023年9月、インテルは全従業員の15%に当たる1万5000人のリストラを発表し、ファウンドリー事業を子会社として分離することを決定しました。これにより、ファウンドリー事業の資金調達の自由度が増し、借入金の返済や、信用評価の維持を狙う狙いがあります。
社外からの視点
業界アナリストや投資家からは、インテルの現状に対する厳しい見方が寄せられています。特に、ファウンドリー事業に投じたコストが、収益性を圧迫しているとの声が多く、インテルの成長に向けた大きな障害となっています。
信用格付けに関しても、S&Pによる格下げが続いており、2023年にはトリプルB格にまで落ち込んでいます。このままでは、借り入れそのものが難しくなるリスクが高まっています。
財務データの詳細
以下は、インテルの信用格付けの変遷を示した表です。
年度 | 信用格付け |
---|---|
1993年〜2022年 | A |
2023年 | トリプルB |
今後の展望と再生への取り組み
インテルは、AI半導体市場での後れを取り戻すため、革新的な製品の投入を計画しています。具体的には、2025年までに1.8nmの次世代プロセス技術を実現する目標を掲げています。この技術革新が成功することで、再び業界の先頭に立つことができるかもしれません。
しかし、長年の競争において負った傷は深く、他社との差別化を図りながら新規事業を展開する難しさは依然として残ります。特に、アームやAMDのような競合他社が急速に市場シェアを拡大しているため、インテルの巻き返しには困難な道のりが待ち受けています。
結論
インテルの「独り負け」を招いた事業の混沌は、巧妙に設計された戦略が裏目に出た結果です。 CEOパット・ゲルシンガーの指導のもと、インテルが抱える課題を克服し、再び半導体市場での主導権を取り戻すことができるか、今後の動向に注目が集まります。