公正取引委員会(公取委)は、来年4月にも、巨大IT企業の取り締まりや調査を行う新しい部署を設置する方針を固めました。この新部署は、特にアップルやグーグルなどの巨大IT企業を念頭に置いた新法「スマホソフトウェア競争促進法」の執行を担う予定です。また、人工知能(AI)などデジタル分野の実態調査も手がけることを計画しています。新しい部署の関連人員は、現行の14人から約50人に増加すると見込まれています。
新部署の目的と体制
公取委は、今後のデジタル市場の競争環境を守るために特化した部署を設立することを決定しました。この新部署は、局長級の「デジタル・国際総括審議官」をトップに据え、内部の公取委職員に加え、データアナリストなどの外部人材も積極的に招聘する方針です。この体制強化は、2025年度の機構・定員要求にも盛り込まれる見込みです。
国内外の状況を踏まえた体制強化
下記の表は、日本と海外の巨大IT規制に関する独占禁止当局の体制を比較したものです。
地域 | 実施する法律 | 担当者数 | 設置予定の新部署 |
---|---|---|---|
日本 | スマホソフトウェア競争促進法 | 現行14人 → 約50人 | 設置予定 |
欧州連合 (EU) | デジタル市場法 | 約100人 | 強化済み |
英国 | 巨大IT規制法 | 約200人 | 増強予定 |
このように、日本は他国に比べて規制を担う人員が少ないため、体制の抜本的な強化が必要視されていました。新しい法の施行に伴い、巨額なリソースと専門知識を持つ海外の巨大IT企業つまり「GAFA」には、より強力な対策が必要です。
新法『スマホソフトウェア競争促進法』の概要
新法は、特にスマートフォンに関連するアプリ市場における巨大IT企業による独占を規制することを目的としています。この法律は次のような主要なポイントを含んでいます。
- アプリストアの他社への開放:アプリストアを運営する企業は、他社に対して公平にアクセスを提供する義務を持ちます。
- 自社サービスの優先表示禁止:検索エンジンやアプリストアで自社のサービスを優先的に表示することは禁止されます。
- 透明性の向上:手数料や取引条件の通知が義務付けられ、開発者は自身のアプリ配信に対する条件をより明確に理解することができます。
巨大ITによる影響と懸念
現在、GAFAの持つ影響力は計り知れません。これらの企業は、独自の生態系を築き上げ、ユーザーのデータを収集・分析することで、他社の競争を著しく制限しています。日本国内でも、グローバルなIT企業が独占的な地位を築くことは、経済の健全な競争を損なう可能性があります。
- データの集中化:GAFAは膨大なデータを持ち、このデータを活用することで競争上のアドバンテージを得ています。例えば、ユーザーの行動を分析することで自社サービスを最適化し、他社はそれに対抗するのが困難です。
- 中小企業への影響:競争が激化する中で、中小企業が生き残るためには、大手に対抗するための高度な技術力や資本が必要となるため、新たな参入障壁が生まれています。
海外との連携強化
公取委は、GAFA対策を進めるために、海外の独占禁止当局との連携も強化する考えです。例えば、EUや英国ではすでに大規模な人員を配置し、規制を強化しています。日本もこの流れに乗り込み、国際的な視点から巨大IT企業との競争に挑む必要があります。
今後の展望
新たに設置される公取委の部署は、デジタル市場の監視と規制の強化に向けた重要な一歩です。日本のデジタル環境が健全で、持続可能な競争を促進するためには、これまで以上に効果的な施策が求められるでしょう。
具体的には、今後の施策や活動は以下のポイントに焦点を当てる必要があります。
- 継続的な情報収集:デジタル市場の変化に対応できる柔軟な体制の確保。
- 新技術へのアプローチ:AIやブロックチェーンなど、新しい技術を取り入れた規制の枠組みの構築。
- 国際的な協調:他国との協力を通じて、日本の企業や消費者の利益を守るための取り組みの強化。
これからもGAFAを含む巨大IT企業との競争が続く中で、公正取引委員会の新部署は、より公正な市場を実現するための重要な役割を果たすことになるでしょう。