定額制動画配信サービス市場において、王者Netflixの優位性に影が差し始めている。市場第2位のU-NEXTが独自の逆張り戦略を駆使し、急速に競争力を高めているのだ。今年2023年、U-NEXTはシェアを15.0%にまで引き上げ、前年から2.4ポイントの成長を記録した。一方、Netflixはシェアを減少させており、状況はまさに逆転の様相を呈している。
国内動画配信市場の成長とU-NEXTの躍進
最近の調査によると、日本の定額制動画配信サービス市場は5054億円に達し、直近1年間で12.1%の成長を見せている。この市場の中で、U-NEXTは確固たる成長を遂げている。以下の表は、2023年の主要動画配信サービスのシェアを示している。
サービス名 | 市場シェア (%) |
---|---|
Netflix | 21.7% |
U-NEXT | 15.0% |
Amazon Prime Video | 13.3% |
DAZN | 10.0% |
Disney+ | 8.5% |
Hulu | 7.0% |
U-NEXTは、ストリーミングサービスとしての強みを活かしつつ、視聴者の多様なニーズに応えるために、圧倒的なコンテンツ数を維持している。その数はおよそ36万本に上り、邦画、洋画、アニメ、海外ドラマ、舞台・演劇など、さまざまなジャンルを網羅している【参照元】。
U-NEXTの逆張り戦略
U-NEXTの経営戦略室の佐野裕美氏はこの成功の秘訣を「逆張り的発想」に求めている。オリジナルコンテンツを排除し、視聴数が少ないコンテンツも残し続けることで、他社にはない圧倒的な品揃えを実現したのだ。これにより、多くのユーザーが競合サービスからU-NEXTに移行した。
本サービスは、アーカイブの管理を内製化することによって、貴重な資源を効率的に運用しており、その結果、継続的にコンテンツを増やしている。佐野氏の言葉を借りるなら、「見たいものを探していたら、U-NEXTにたどり着いた」という声が多く寄せられているそうだ。
Netflixの影が薄くなる現状
一方、Netflixは近年、シェアを減少させており、収益の伸び悩みや競合他社の攻勢に苦しんでいる。特に、日本市場では2020年から2021年にかけてヒットを飛ばした『愛の不時着』や『イカゲーム』といったコンテンツに依存していたため、次のヒット作を生み出す難しさが浮き彫りになっている。
NetflixとU-NEXTのコンテンツ戦略
サービス名 | オリジナル作品数 | 提供コンテンツ数 |
---|---|---|
Netflix | 650+ | 5000+ |
U-NEXT | なし | 360,000+ |
こうしたデータを見ても分かる通り、U-NEXTはオリジナルコンテンツに頼ることなく、逆に多様なジャンルのコンテンツを取り揃えることでユーザー改造に成功している。
HBOとTBSの統合で強化されるラインナップ
U-NEXTは2021年からHBO作品を独占配信し、既存のコンテンツに対する不満を解消するため、2023年にTBSとテレビ東京系のドラマ、バラエティ番組を配信していた「Paravi」と統合を果たした。この統合により、U-NEXTは新しいユーザーを獲得のみならず、旧ユーザーの再獲得にも成功している。
Paravi統合のメリット
この統合により、U-NEXTは以下のような効果をもたらした。
- 視聴者の獲得: TBSやテレビ東京の人気コンテンツを扱うことで新規視聴者を増加。
- ブランディングの強化: テレビ番組の終了後に「過去の放送はU-NEXTで」とアナウンスされることにより、視認性が向上。
- 認知度の向上: 知名度を向上させることに成功し、より多くの視聴者がU-NEXTを利用するようになった。
競争が激化する中でのU-NEXTの未来
U-NEXTの戦略が奏功しているとはいえ、競争はますます激化している。NetflixやDisney+、さらにはDAZNといった大手が持つ資金力と知名度に対抗するためには、さらなる独自性が求められる。
今後の展望と課題
- 持続的なコンテンツが必要: オリジナル作品がない中で、他社の動向を注視し続ける必要がある。
- ユーザーエクスペリエンスの向上: UX/UIの改善により、使いやすさを向上させなければならない。
- 国際展開: 国内市場だけでなく、海外進出を視野に入れる戦略が重要になるだろう。
今後数年の間に、U-NEXTがさらに成長を遂げるのか、それともNetflixが復活するのか、注目が集まるところだ。